ヒナイチが男の人のゴツゴツした手が好きと言ってたので…
日常でこんなやりとりあったら可愛いな

ここは、ロナルド吸血鬼退治事務所。

ヒナイチは「監視任務」という名目で、吸血鬼のドラルクの行動を観察していた。だが、今その任務は形ばかりのものとなり二人は並んでソファに座りゲーム画面に向かい合っていた。

「ほら、ドラルク!そこだ、もっと左だ!」

「分かっているとも。だが君の指示が的確とは言い難いな。」

ドラルクは落ち着いた口調で応じながら、手元のコントローラーを操作している。

画面には敵を倒すために必死で立ち回るキャラクターたち。横目でドラルクの手元を見たヒナイチは、思わず目を奪われた。

細く長い指がコントローラーを器用に操り、滑らかに動く。その指の関節や筋が動くたびに、どこか目を引く美しさと力強さを感じた。吸血鬼特有の蒼白い肌だが、その冷たい色味が逆に際立たせる男らしい骨ばった形状。

(なんでこんな時に手なんか気にしているんだ、私……!)

「ヒナイチ君、何をぼうっとしているのだね?」

ふと気づいたドラルクが、ゲーム画面から目を離さずに問いかける。

「あ、いや……!」

慌てて視線を戻し、コントローラーを握り直すヒナイチ。

「お前が遅いからイラついてただけだ!」

「ほう。ならば君のその不満、私の操作で黙らせてみせよう。」

ドラルクは挑発的に笑い、画面内で華麗な動きを見せつける。その冷静さと技術に感心しつつも、ヒナイチの視線は再びその手に引き寄せられた。

(お前の手、ほんと綺麗だよな……。いやいや、何考えてんだ!私は!仕事中だぞ!)

「ヒナイチ君、どうしたのかね?」

その声に現実へと引き戻され、ヒナイチは再び動揺する。

「す、すまない」

顔が赤くなるのを感じた。

ドラルクは一瞬視線を彼女に向け、微妙な変化を見逃さなかった。

「ふむ……ヒナイチ君、まさか私の手に見惚れているのではないかね?」

「は、はあ!?ドラルク何言ってる!?」

ヒナイチは顔を真っ赤にし、無意識に身を乗り出した。その拍子に、彼女の手がドラルクの手に軽く触れてしまう。

「おや、触れるとは思わなかったな。」

ドラルクは穏やかな声で言うと、彼女の手をそのまま包み込むように握った。

「……っ!」

ヒナイチは反射的に手を引こうとしたが、その冷たさと柔らかさ、そしてどこか安心感のある握り心地に動けなくなる。

「冷たいだろう?吸血鬼の手は人間と違って温もりに欠ける。しかし……君はそれを嫌がる様子はないな。」

ドラルクの声はどこかからかうようだが、優しさが滲んでいた。

「……ドラルク」

ようやく言葉を絞り出し、彼女は手を振り払うように引き戻した。

「ほほう、それにしては顔が赤いようだが?」

ドラルクは満足げに微笑み、再びゲーム画面に視線を戻す。

「もうお前とはゲームしない!」

ヒナイチは怒ったように言い捨てたが、内心ではドラルクの手の感触が消えないままだった。

胸の高鳴りを押さえ込もうとする彼女の隣で、ドラルクはゲームを再開しながら静かに呟く。

「やはり君との監視任務は、実に興味深いものだな。」